商品開発部吉廣 空
2008年入社
環境情報学部環境政策学科出身
入社後本社工場でお好みソースをはじめとするレギュラー商品の製造を3年間担当。その後、製造の経験を活かしつつ開発課で味の開発を担当。趣味は筋トレ。鍛えた体と、未知の味への興味で、ハラール認証取得に挑む。
海外営業部佐々木 真之
2014年入社
商学部商学科出身
入社後本社工場でオーダーメイド商品の製造を1年半経験し、海外営業部へ異動。営業担当ながら、マレーシア工場の営業・事務・製造のすべてのサポート役として工場立ち上げに貢献。趣味はゴルフとスノボ。
Otafuku Sauce Malaysia 出向
尼田 和孝
Otafuku Sauce Malaysia
YAP SWEE HUAT
Otafuku Sauce Malaysia
NOR LIYANA
BINTI HAMDAN
2016年2月、開発課の吉廣 空は、オタフクソースマレーシアの開発担当に任命された。オタフクソースの主力商品であるお好みソースは、豚肉のエキスなどを使用しているため、日本で製造した商品ではムスリム市場での流通が難しい。厳格なムスリムに安心して使用してもらうためには、「ハラール認証」を取得する必要があり、そのためには原材料から見直す必要があった。
当時の吉廣は、開発担当となって5年。味を作る経験を重ね、前年に中国青島工場にて、応援のため、1か月半程海外で業務をした経験があったが、自分が主体となって海外工場で製造する商品を作るのは初めてだった。吉廣は責任の重さを感じたが、反面、非常にやりがいを感じ、早速試作に取り掛かった。
ハラール認証を取得した原材料は、既にマレーシア工場立ち上げのために動いていた佐々木 真之や尼田 和孝が持ち帰ってくれていた。それでも足りない原材料は自らマレーシアに赴き、原材料を探索した。
他にも、お好みソースにふさわしいデーツの探索。新しい原材料がハラール認証を得ているかの確認。旨味を出すための原材料の配合の試行錯誤。旨味は、肉系原材料などは使用できないため、代わりに、魚介系の旨味を中心にいくつもの原材料を組み合わせて味を近づけた。
吉廣はトライ&エラーを繰り返し、開発課のメンバーや佐々木・尼田の力を借りながら、少しずつ理想のお好みソースを作り上げた。
「これだ!」と思うものが出来上がったのは、マレーシア工場が稼働する直前の7月。実に半年がかりの力作だ。
日本と同じお好みソースの味ながら、マレーシアの志向も加味して出来上がった甘めのお好みソース。マレーシアの味を良く知る佐々木や尼田も「おいしい!いいね!」と言ってくれる出来だった。
吉廣がお好みソースづくりに奮闘している頃、佐々木達も現地で会社・工場の立ち上げに奮戦していた。
2016年4月に会社を設立し、日本の本社工場の支援を受けながら工場設備を整え、原料が届かず製造ができないなどのトラブルも乗り越え、マレーシア工場は、同年7月にはテスト稼働開始、8月には本稼働を迎えた。
工場稼働開始の時期には、吉廣もマレーシアに滞在し、工場稼働に立ち会った。
新たに加わったヤップ達マレーシア人のメンバーには、語学が一番堪能な佐々木が製造方法などを伝えた。佐々木は、日本の本社工場で多品種小容量のオーダーメイド商品を製造した経験があるため、製造のコツをよく知っており、指導役としても奔走した。
こうして順調に工場は稼働し始めたが、ハラール認証を得ていない調味料では、ムスリムの人々に使用してもらうのは難しい。そのため、いよいよ、ハラール認証取得を目指して動き出した。
ハラール認証を取得するには、通常半年から1年の期間を要する。3か月の稼働実績の後に申請を行い、その後、認証機関による書類審査と現場審査を受け承認されて認定となり、ハラール認定証やハラールマークが付与されるためだ。
まずは、2016年11月にお好みソースなど16品目の認証申請を開始した。
ハラール認証の中心メンバーとなったのは、吉廣と、リアナやヤップだ。不備の無いマレー語の申請文書の作成や、監査への適切な対応、綿密なハラール認証機関との折衝を行うことで、ハラール認証のステップは順調に進んだ。
また、佐々木や尼田もハラール認証取得をサポートするべく、ハラール認証機関に2度のプレゼンを行った。企業概要、ハラール市場進出の目的の説明や、お好み焼きをはじめとする実際のメニューの試食を行うことで、認証機関の信頼を得た。
ハラール認証の申請が集中しているため、認証取得には時間がかかりがちだが、社員の一致団結での頑張りにより、工場稼働から約6か月後、無事にハラール認証が取得できた。
吉廣は、日本でその知らせを受けた。メールに添付された認定証を見て、自分がやり遂げたことを実感した。
佐々木は、それをマレーシアの工場で直接知った。感慨と共に、「やっとスタートラインに立てた」と思った。
お好みソースがハラール認証を取得したことで、ソースも含めてハラールのお好み焼きを楽しめるようになった。
とあるスーパーマーケット様では、既に30店舗以上で、惣菜としてお好み焼きが販売され、大ヒットメニューになっている。
ムスリムが食べることができない豚肉の代わりに、鶏肉、ラム、魚肉など、お好みのハラール食材に変えて、ハラールお好み焼きを広めていき、また、このハラール認証を契機に、現地のローカルな食文化に合わせた調味料開発にも注力していく予定だ。
佐々木は語る。
「この仕事を通じて、お好み焼きは、ムスリム圏で広がる土壌があると改めて感じました。一度はあるデパート様からのご依頼で、10日間連続で屋台での試食を行ったことがありますが、おいしさはもちろん、香ばしい匂いや、ジュージューという音の魅力、焼き方のパフォーマンス性の高さは、マレーシアの人々にも愛されています。これからも、必ず広がっていくと思うし、営業として、食文化を広める“コト売り”を、日本でも世界でも続けていきたいと思います。」
開発を担当した吉廣は語る。
「ハラール商品の開発を通じて、日本だと購買、開発、製造、品質管理、品質保証と分業されている“ものづくり”を、全て自分で経験できて、大きな財産になりました。
それに、異文化の社員と一緒に一つのものを作り上げられたことも、大きな喜びでした。英語がそれほど流暢なわけではないのですが、拙いからこそ伝わった時の喜びも大きいです。
“ものづくり”には色々な段階があるのだと肌で実感できたので、自分の能力を広げられるように、経験を積んで、知識を広げていきたいです。“ものづくり”に、これからもずっと関わっていきたいと思っています。」
「健康と豊かさと和」を世界へ届けるという、オタフクソースの挑戦は、これからも続く。