デリカ営業部 量販惣菜課川村 英史
2008年入社
法学部 法律学科出身出身
入社後、東京配属となり3年間特販を担当。その後、名古屋へ異動となり9年間、多彩な食文化を学ぶ。東京へ戻り、再び業務用担当1年を経て、新設部署のデリカ営業部 量販惣菜課へ。業務用一筋で14年を迎える。趣味は「自然に触れ、非日常空間を満喫できる釣り」と「ご当地や話題のグルメを食べ尽くすこと」。
東京開発課上田 紗季子
2017年入社
農学部 農芸化学科出身出身
東京で生まれ育ち、入社後、広島の開発課に配属となり、1年半、主に西日本の調味料開発を行う。その後、東京へ異動となり、故郷の味覚を活かし東日本の調味料開発を担当。趣味は、「ディズニーランドに行くこと」と「トレンド調査も兼ねたグルメ巡り」。
「そういえば…カツサンドにお悩みがあるらしいよ」。
大手スーパーマーケット様への同行商談をお願いしていたお取組先の方が、雑談の中で何気なくもらした一言が、川村のアンテナにひっかかった。「これはチャンスだ!」
お取組先の方が話してくれたカツサンドとは、川村が新たに担当することになった大手スーパーマーケット様の定番メニュー。スーパーマーケットの担当者様は、カツサンドを惣菜コーナーの看板メニューにしたいと考えている、とのことだった。川村は「当社だからこそできるフルーティーなソースで、もっと美味しいカツサンドを!」そんな想いを、スーパーマーケットの担当者様へのご挨拶で熱く語った。
挨拶だけと思っていた川村の話に、担当者様は戸惑った様子だったが、美味しさだけではなく市場性と結びつけた話の内容に「ワクワクしてきました。提案が楽しみです!」と顔をほころばせていった。
「満足いただける提案をして、もっと笑顔になってもらおう!」川村は心に決めた。
川村が会社に提出した専用ソースの開発依頼書を見て、まっさきに手を挙げたのが、上田だった。数年前、川村の名古屋営業所時代にも、上田は一緒に仕事をしたことがあり、川村が東京へ異動してからも食のトレンドやグルメについて情報交換をしていた。また、上田自身は短期間での商品開発を何度も行ってきた経験もあり、スピード感には自信があった。
上田が開発担当者になったことを聞いた川村は、なんとしても結果を出したいと強く思った。
2人が一番に取り掛かったのは、カツサンドを食べて美味しさを数値化すること。専門店、量販店、大手小売店のカツサンド30数種類を食べながら、カツとパンのバランスがよいソースの美味しさを模索した。
通常、試作品の提案は1種類だが、担当者様の要望をより絞り込めるよう、上田は2種類を用意して自身も商談に同行した。
そして迎えた商談日。用意したカツサンドを一口食べた担当者様は「フルーティーさが足りない」とキッパリ。酸度や塩分値などをいくら数値化しても体調や天候で『味覚』は左右される。担当者様のイメージと何が違うのか、どのように変えればいいのか。「なんとしても次に繋げなければ。このまま終わるわけにはいかない。」との思いから、2人は必死に食い下がった。
試作をしては持参して商談を、またご意見をいただいては試作…と、何度も繰り返した。この商談で終わってしまうかも、いや終わらせられない…そんな緊張感の中で、いつも商談は進められていた。
商談後、片道1時間半の帰り道はいつも反省会。「もう少し甘くって言われたけど、どれくらい甘ければいいのかなぁ~。」なかなか首を縦に振ってくれない担当者様に、川村の口調が沈むことも。そんな時、上田は「でも、笑顔でしたよ。少し口角が上がっていました。」といって元気づけた。
反省会の翌日は再び検討とカツサンド試食の日々。担当者の残した短いヒントを、頭の中で何度も繰り返しながら、求めるソース、こだわり、熱意を、いかにしてソースというカタチにしていくのか、2人は考え続けた。カツサンド好きの川村が、カツサンド嫌いになるかもしれないくらいまで食べ続けた頃、担当者様の微かな笑顔が、はっきりとした笑顔に変わっていた。
担当者様の笑顔を本物にするために、2人は次のステップへ進んだ。
2人が目指したのは “自信を持って売っていただけるカツサンド”。カツサンドを食べられる生活者のお客様に「美味しい!」と言っていただくこと、「また買いたい」と思っていただくこと。美味しさのその先の、生活者のお客様の満足感が本当のゴール。五感に訴える美味しさで、思わず手に取りたくなるカツサンドという『お客様の目線』にこだわった提案になっていった。
川村の「オタフクソースに任せてください!」宣言から、半年あまり。
これが最後の商談という帰り際、担当者様から「川村さん、明日、採用するかどうかのご連絡をさせていただきます。」と言われた。淡々とした口調からは真意が汲み取れず、川村は少し動揺したが、やり尽くしたという満足感はあった。
「お待ちしています!」
連絡は川村の携帯電話にかかってくることになっていた。その日、いつも通り業務にあたりながらも、連絡を待ったが、携帯電話は一向に鳴らない。会社を後にして帰宅しようとバスに乗り込んだ時、川村の携帯電話が鳴った。担当者様からだ。バス内で電話をとるわけにいかず、慌てて次のバス停で降り、折り返し電話した。
「カツサンドのリニューアルは、オタフクソースさんにお願いします。」
採用を告げる担当者様の声を聞きながら、バス停で、川村は泣いた。
翌朝一番に、報告したのは上司、ではなく上田だった。上田もまた採用の知らせを心底喜んだ。
2人が心血を注ぎ、工夫を重ねたカツサンドは、リニューアルによって売り上げが2倍となり、押しも押されぬ看板メニューとなった。この知らせに2人は胸をなでおろした。
2人は今、次なるリニューアルに向けて走り出している。
「当社ソースの採用がゴールではなく、スタートである。」という思いが強くなったからだと、川村は言う。「味の世界は日々変化するので、これからもスピード感を持って取り組んでいきます。」と上田。
お客様の求める美味しさにゴールはない。 “次の美味しさ”を、“もっと美味しい”を目指して。挑戦はこれからも続く。