昭和30年代の思い出エッセイ募集
入選作品紹介
祖母のお好み焼き
原山 摩耶(徳島県)
「ご飯出来たよー。」と叫ぶ声がする。
その声の主は祖母だ。私は生まれて間もなく祖母に育てられた。
テーブルの上にはいつも白いご飯、漬物、魚、決まってこのメニューだ。
祖母は料理が苦手だと言うことは誰が見てもすぐにわかる。
それでも、一生懸命用意してくれた。まだ、ありがたみの知らない幼い私は、文句を言う。
「えーまたこれ?もっと違うの食べたい!お好み焼きとかハンバーグとか!」
そんな日々が続いたある日のことだった。庭で遊ぶ私の鼻に嗅ぎ慣れないソースの匂いが届いた。
祖母は私のためにお好み焼きを作ってくれていた。その夜の夕食はお好み焼きだった。
それは美味しいとはかけ離れたものだった。キャベツは乱切りでは一口では入らないくらい大きくて固く、
ねぎではなく、玉ネギが入っていて、肉なんてものを買わない祖母はソーセージを入れていた。
一口で食べるのをやめた私に祖母は、「美味しいものを食べさせられなくてごめんね。」とそっとつぶやいた。
そして私にはふっくら炊き上がった白いご飯と漬物、魚、が並べられた。すまなそうな顔をして一人お好み焼きを食べる祖母。
あの頃は素直になれなかったけれど、本当はとても嬉しくてありがとうと言いたかった。
あれから60年の月日が流れ、私も孫に料理をする年齢になった。
あの日を思い出しながら、祖母を思い出しながら今日も料理を作る。
一覧
お好み焼きが紡いだ絆館 高司(埼玉県)
祖母のお好み焼き原山 摩耶(徳島県)
オリンピックのお好み焼井山 孝治(広島県)
お好み焼き 嫌いなのか?會澤 公平(広島県)
家庭の味、お店の味。心に刻まれた幸せな風景。峯 綾美(広島県)
おばあちゃんのてっぱんお好み焼きM.N(兵庫県)
貧しかった頃のお好み焼き古田 ミホコ(広島県)
はじめて食べたお好み焼きの思い出呉の秀ちゃん(広島県)
「8マン危機一髪!」井尻 哲(広島県)
父ちゃんの「いえおこ」亀井 貴司(広島県)
「カタカタ」と生玉子の音色(ねいろ)世良 元昭(広島県)
右手の卵大信 容子(広島県)
私とお好み焼き皆川みどり(広島市)
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