昭和30年代の思い出エッセイ募集
入選作品紹介
おばあちゃんのてっぱんお好み焼き
M.N(兵庫県)
 カオルは小学4年生。学校から帰ると毎日、おばあちゃんのお好み焼き店の手伝いに行く。カオルはおばあちゃんと一緒にお好み焼きを焼くのが大好きだ。
 カオルのおばあちゃんは、おじいちゃんが戦死してから自宅の1階を改装して「キヨちゃん」という自分の名前を付けたお好み焼き店で毎日、お客さんにお好み焼きを焼いている。
 「カオルはお好み焼きを焼くのがうまいなあ。もうりっぱな「キヨちゃん」の大将だ。キヨさんも安心だな」
 「この店はわたしの代で終わりだよ。カオルには勉強して偉くなってもらいたいからね」
 おばあちゃんは八百屋のゲンさんにそう言ったけど、カオルはおばあちゃんと一緒にずっとお好み焼き屋をやりたいと思っている。
 「店を始めたときは、アメリカさんから配給されたメリケン粉を使ってたんだけどね。こうやって、てっぱんに小麦粉を薄くのばして、その上からキャベツをてんこもりにして、豚肉をのせて、ていねいに重ね焼きをしていくんだよ。中華麺もやわらかくほぐしてからのせるとうまく焼けるよ」
 おばあちゃんに教えてもらった通りに作ると、ほんとうにおいしいお好み焼きができるから不思議だ。
 最後のお客さんが帰ったあと、おばあちゃんは特別に「カオルのお好み焼き」を作ってくれる。中華麺が売り切れの時はかわりにうどん玉、豚肉がないときは魚肉ソーセージをたくさん入れて、カオルだけの大きな特製お好み焼きの完成だ! そのお好み焼きをおばあちゃんと半分こして食べるのが、カオルの一番の楽しみだ。
 おばあちゃんはカオルが中学生の時に白血病で天国に逝ってしまったけど「キヨちゃんのお好み焼き」はまだカオルの心の中に生きている。今、カオルはおばあちゃんの跡を継ぐために調理師免許を取る勉強を頑張っている。
一覧
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はじめて食べたお好み焼きの思い出呉の秀ちゃん(広島県)
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