昭和30年代の思い出エッセイ募集
入選作品紹介
「8マン危機一髪!」
井尻 哲(広島県)
 殺し屋ゲーレンの火炎放射器攻撃で電子頭脳が衰弱した8マン(エイトマン)は鎖につながれて危うし! ベルトのバックルに納められたタバコ型強加剤を速く口にせんと、速く!
 ヘラをもたない手で、ドキドキしながら少年マガジンのページをめくる。いや、めくれない! 前に読んだ誰かがお好みのそばを肝心なところに落として紙がくっついて剥がれない!
 あの頃のお好み屋さんは貸本もしていて、少年マガジンを買ってもらえない僕らは小銭を貯めてお好み屋さんに居すわり、何冊もの漫画を読み漁るのが何よりの楽しみだった。
 漫画本のインクのにおい、蒸したキャベツのにおい、そしてお好みソースの甘酸っぱいにおいが入り混じったのが僕の悪ガキ時代の思い出だ。持ち帰りの時も竹の皮にのせ、新聞紙で包んでくれたので、インクのにおいはお好み香3大要素の1つだったと思う。今のお好み焼きにはそれが無いのがちょっと寂しい。
 何時間ねばって居てもおばちゃんはニコニコしながら僕に冷たい麦茶をついでくれた。
 「なんぼでも好きなだけ読んで行きんさい。」ありがとうおばちゃん、うちのお母ちゃんもおばちゃんみたいに優しかったらええのに。
 そういえば、足元には丸々と太ったネコが寝そべっていたな-。みんなから一片のお好みを投げてもらうが、肉と卵なら食べるのにキャベツやもやしは知らんふりしやがる。僕はやらない。一片たりとも無駄にはできん。
 人質の幸子さんに強加剤をもらってゲーレンをやっつけ事件を解決して東八郎に戻った。
 ビールを飲みながら、半世紀以上も前の物語を思い浮かべていたら、「お父さん、おそばが落ちてますよ!」と家内から叱られた。
一覧
お好み焼きが紡いだ絆館 高司(埼玉県)
祖母のお好み焼き原山 摩耶(徳島県)
オリンピックのお好み焼井山 孝治(広島県)
お好み焼き 嫌いなのか?會澤 公平(広島県)
家庭の味、お店の味。心に刻まれた幸せな風景。峯 綾美(広島県)
おばあちゃんのてっぱんお好み焼きM.N(兵庫県)
貧しかった頃のお好み焼き古田 ミホコ(広島県)
はじめて食べたお好み焼きの思い出呉の秀ちゃん(広島県)
「8マン危機一髪!」井尻 哲(広島県)
父ちゃんの「いえおこ」亀井 貴司(広島県)
「カタカタ」と生玉子の音色(ねいろ)世良 元昭(広島県)
右手の卵大信 容子(広島県)
私とお好み焼き皆川みどり(広島市)
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